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腫瘍の治療方法

治療方法の決定(1)
バイオプシー
治療方法の決定(2)
総合評価


治療方法の決定(1) バイオプシー

腫瘤(しこり)が認められた場合、通常はまずバイオプシー(生検:先の項目で説明した針生検などが含まれる)により腫瘤が何であるかを判定します。

 バイオプシーを行う場合の基準  治療方法が変わるなら検査をする!
   その腫瘤が何であるかの結果によって治療方法が変わる場合
    しこりが腫瘍か腫瘍でないか、腫瘍でも良性と悪性、腫瘍の種類によっても治療方法(外科
     手術、化学療法、放射線療法かなど)は変わります。また肥満細胞腫や口腔内繊維肉腫など
     では局所再発(手術した部分に再発すること)が高いため他の良性病変よりも大きな外科切
     除が必要になり、手術前に、どれだけ切除するかその見積もりを立てなければなりません。
     また、腹腔内の腫瘤の場合は破裂すると命の危険があるため、それが結果として何であろう
     と取れるものは手術で取る事が第一なので腫瘤の正体に関わらず手術をするのなら術前の
     検査は行わないことがあります。
   結果が飼主の方の治療の意思に影響する場合
    良性なら治療するが悪性なら治療しない等、飼主の方が治療意思決定の判断材料とする場合。

  バイオプシーを行わない場合の基準  リスクが利益より大きいならしない!
   血液凝固障害がある場合(出血が止まらなくなる)。
   腫瘤内の細菌や腫瘍細胞が他の組織にばらまかれる危険性が高い場合。
   バイオプシーをしても診断価値が低いと考えられる場合。
     腫瘍の中には細胞診を診ても種類や良性・悪性の判断がしにくいものがあるので無駄な検査は行わない。(腸管などの腫瘍)その場合は治
      療も兼ねて手術を行い、手術後に摘出腫瘤を検査にまわし診断をつける。

 バイオプシーの種類  検査部分に合った種類を選択する!
   針生検(ニードルバイオプシー)
   パンチ生検
   切開生検
   切除生検
   その他特殊な生検
それぞれに利点と欠点があり、どこに検査する腫瘤があるかによっても選択する方法が変わります。針生検は簡単でペットにも負担がかからず早く実施でき、採取した部分の細胞の形態を院内で観察する事ができます。たいていの腫瘤について、それが非腫瘍性のものなのか、腫瘍性のものなのかの判断、腫瘍であれば良性の可能性が高いのか悪性の可能性が高いのか、また特徴的な細胞からなる一部の腫瘍についてはこの方法で診断が下せる場合もあり、とても利用価値の高い方法です。しかし、針生検の欠点として、文字通り「針で突いた」ほどの材料しか採取できませんから、その腫瘤が「腫瘍」とその周囲の「腫瘍のせいで腫れている正常な部分」からなっている場合「針で突いた」部分が腫瘍に届かず肝心の箇所が採取できないことがあります。また、針生検で観察できるものはその細胞の形態に限られ、組織の構造的関係(細胞相互の並び方)等は観察できません。その腫瘍が何であるかを決定するには細胞の形態だけでなく構造的関係が非常に重要であるため、針生検だけで腫瘍の種類や悪性度を決定することは正しくありません。そこで、針生検で十分な情報が得られない場合にはその他の方法を選択し必要な情報を得ることになります。パンチ生検、切開生検、切除生検では針生検ほど簡便ではなくなりますが、それぞれある程度の大きさ(塊り)の組織を採取しますので構造的関係まで観察する事が可能です。これらの採取組織は専門の病理検査センターに送られ病理検査医師(動物専門の病理医師であることが重要)によって診断が下されるのです。
なぜこのような検査手順を踏むことが必要なのか?それは「バイオプシーを行う場合の基準」を逆に考えればよいのですが、その腫瘤の正体によって治療方法が変わるからです。相手が最新鋭の装備を持って向かってくる強敵なら、こちらもそれなりの準備とよく練った戦法で挑まなければ敗北は確実でしょう。また弱い相手に過剰な攻撃を加えるのもやりすぎです。相手の正体素性を調べ、これからの戦法(治療方法)を計画するために、まずはバイオプシーという手段を利用するわけです。

治療方法の決定(2) 総合評価

バイオプシーによる検査によらなくとも、その腫瘤の様子から悪性腫瘍を疑える場合もあります。大きさが急速に増大している、自潰している等は悪性腫瘍の可能性が高くなるなど、悪性ではないかと推測するためのいくつかのチェック項目があります。また、乳腺の腫瘍は、犬では良性:悪性が50%:50%で発生しますが猫ではその80%が悪性であることが分かっていますので、犬では1/2の確率で悪性、猫ではほとんどが悪性と考えることができます。このように検査や臨床症状から悪性腫瘍であることが疑われる場合には、その進行度(ステージ)がどの程度であるのかを把握する必要があります。なぜなら 「がんは不治の病?」で触れたように腫瘍の進行程度により「完治(根治)可能な範囲」「治らないが快適な生活を目指す範囲」と分かれており、それに合わせて治療も「完治(根治)目的の治療」、完治はできないが、がんと共存して生活していく「緩和療法」、がんが進行してしまい、がんそのものに対しては何もできない段階であるが、ペットのQOL(生活の質)の向上を目的として行う「対症療法」と、それぞれ治療目的が異なっているからです。たとえ同じ種類の悪性腫瘍であっても、その進行度が異なり、治療目的が異なれば当然治療方法もまた異なってきます。これからの治療方法を決定するために進行度を知ることが必要なのです。
進行度を知るには、まずその腫瘍の大きさ、個数、周囲の組織との付着の仕方、広がり方等を調べます。また、悪性腫瘍は転移をするという特徴がありますが、最初に腫瘍ができている場所から転移するにはリンパ管や血管に入って遠くの組織に運ばれて行くため(遠隔転移)その中継地点となるリンパ節、遠隔転移しやすい臓器を触診、血液検査、バイオプシー、レントゲン、エコー、場合によりCTやMRI等も必要に応じ利用し、検査をして全身の情報を集めるのです。
また、腫瘍その部分だけに注目するのではなく、ペット自身の全身状態を知ることも重要です。たいていの腫瘍は中年から老齢のペットに発生するため、腫瘍とは別に心不全、腎不全、内分泌疾患等の持病を持っている場合も少なくないでしょう。腫瘍の進行度から考えると十分に完治を望める場合でも、そのために行なう治療にペットの体力が耐えられず大きなダメージを受けてしまうのなら、一体誰のために、何の目的で治療をしているのか全く分からなくなってしまいます。しかし逆に、ペットの全身状態にきちんと注意を払って考慮に入れ治療計画を立てるのであれば、老齢であろうと、持病があろうと、腫瘍治療を受けることも可能なわけです。13歳だから、15歳だから治療は諦める・・・必ずしもその必要はないのです。
さらにもうひとつ、ペットの全身状態を知っておかなければならない大きな理由が存在します。悪性腫瘍は、その腫瘍や転移による症状とは別に、無関係な身体の構造、機能にも変化を起こすことができます。これを副腫瘍症候群(腫瘍随伴症候群)と呼び、ある特定の腫瘍に対して特定の症状が現れることが知られています。例えば、リンパ腫や乳腺癌、肛門周囲腺癌の時に伴う高カルシウム血症(血液中のカルシウム濃度が高くなり、腎不全をはじめ心臓血管系、消化器系、神経系に悪影響を及ぼす)やインシュリノーマ、肝細胞癌の時の低血糖(血糖値が低くなり、神経症状:痙攣発作、昏睡、死亡などが起こる)などが挙げられます。これらは、それぞれ元の腫瘍のために起こるのですが、しばしば腫瘍そのものよりも副腫瘍症候群の症状の方がペットの状態に大きな影響を及ぼすこともあり、これらを先に改善しないといけない場合もあります。さらに、胸腔内や腹腔内などの外からでは見えない部分の腫瘍の場合は、この副腫瘍症候群の症状からたどって元凶である腫瘍を突きとめるきっかけを作ることもあります。(高カルシウム血症になっているから、どこかにリンパ腫があるのかもしれない、と疑って検査するなど)

さて、以上のような流れで腫瘤(しこり)を検査し、それが悪性腫瘍である疑いが強いならば腫瘍部分のみならずペットの全身の検査を行って悪性腫瘍の進行状態を把握します。その腫瘍の進行度と、ペットの全身状態を副腫瘍症候群に留意しながら合わせて総合評価し、最終的に治療目的(完治目的か緩和療法か対症療法か?)と、その目的に合った治療方法を決定することになります。




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腫瘍の治療方法
(治療方法の決定1,2)
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日本獣医がん学会


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