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各治療法の効果 外科療法




各治療法の効果

左の図は各治療方法の、がん細胞を減らす効果について表したものです。最も短時間で細胞数を減らすことができる手段は外科療法であり、それに放射線療法が続きます。化学療法は、単独では効果が低くなっていますが、一般的には化学療法単独では使用せず、外科療法+化学療法、放射線療法+化学療法と他の治療法と組み合わせて実施する事で、より多くの効果を発揮することができます。

外科療法

腫瘍を手術により切除する方法です。しかし、腫瘍の摘出術は単なる「しこり取り」とは異なります。目に見える腫瘤がたとえ1cmのわずかなものであったとしても、実際の腫瘍細胞一つ一つは腫瘤の周囲に広がって存在しているのです。

例えば皮膚の腫瘍を切除する場合、腫瘍そのものだけをコロリと剥ぎ取っても目に見えないレベルの腫瘍細胞が周囲に残されてしまいます。腫瘍の進行度が浅く、根治目的で行う手術であれば、それら目に見えない癌細胞もあまさず切除すべく「広さ」と「深さ」において出来るだけ大きく切除するのが正しい方法と言えます。1cm大の腫瘍であっても、それが悪性であれば10cmの広さ、もしくはそれ以上の余裕を取って摘出することもあるのです。もし、余裕の取り方が少なく癌細胞が取り残されてしまい同じ場所に再発してしまったとすると、一度メスを入れた場所の再手術は技術的にもやりにくいうえ、再発までの

間に癌細胞はより広い範囲へと確実に広がっています。初回の手術時には根治を望める進行度であったものが、1回できれいに取り除かなかったために根治不可能な段階まで進んでしまう可能性があるのです。そのため、腫瘍の進行度により根治可能であると判断した場合には、1回の手術というチャンスを最大限に生かせるよう思い切った切除を行うことが必須です。では、腫瘍が根治不可能な段階まで進行している場合にはどうでしょうか。基本的には手術をしても治る可能性が全く無いのであれば行わないのですが、後述するような「ペットに利益がある」場合には適応されます。では、根治可能な範囲と、根治不可能な範囲が重なり合うような、どちらともいえない微妙な進行段階の場合はどうでしょうか。この場合、何もせずに手をこまねいていては癌により命が縮まるのは明白ですので「治ることを目指す」のであれば積極的に治療を行うことが求められます。そこで、癌細胞を減らすには外科手術が最も効果的ですから、可能な限り腫瘍を取り除き、残されてしまう癌細胞は他の治療法方と組み合わせて治療を行うようになるわけです。このような理由で、腫瘍の手術前(他の治療方法も含めた腫瘍の治療前)には、その腫瘍がどの程度の悪性度なのかを知っておき、どのような手術を行うかの計画を立てて、1回だけのチャンスを有効に利用する必要があるのです。
また、もうひとつとても重要なことは、切除した腫瘍や組織を全て病理組織検査に提出するということです。悪性腫瘍が根治するかどうかにおいて、腫瘍が完全に取りきれているかを検査しなければなりません。先ほどから何度も述べているように癌細胞ひとつひとつは肉眼では観察不可能です。切除した組織の端っこに癌細胞が存在していれば、それは取りきれていない、癌細胞がまだ身体に残っていることを意味しますし、腫瘍の周囲の血管やリンパ節、リンパ管内に癌細胞が存在していれば、それらを通り道として既に他の場所に転移している、転移するであろう可能性を示唆します。さらに、癌細胞の配列や形態を顕微鏡的に観察することによって、その悪性腫瘍の本当の悪性度がどの程度であるかも判明します。病理組織検査から得られるこれらの情報は、ペットの腫瘍が手術だけで根治できるのか、それとも根治のためにはさらなる方法を加えての治療が必要なのか、またそれらの治療を行った場合の経過が良好なのか悪いのかを判断する最も重要かつ信頼できる唯一のものです。手術のみを行いこの検査を実施しないことは、尻切れトンボであり治療を行う上で、ペット、飼主、獣医師全てにとって大きな損失になることです。そのくらい病理組織検査は必要不可欠なものなのです。普通、治療前の検査ではそれから行う治療が間違った方向にそれないよう計画を立てるための必要最低限の情報しか得られません。それは腫瘍の「まるごと全体」を検査しているのではなく、バイオプシー他では腫瘍の一部やマクロな部分しか観察できないからです。しかし、術後に腫瘍丸ごとで行う病理組織検査では全てを観察できるために、その腫瘍の名称だけでなく、上記のような詳しい情報が得られます。ここで初めて腫瘍に関する正確な確定診断がつけられるわけです。一部例外の腫瘍を除いては、この病理組織検査なくして「確定診断」をつけることはできません。
このように、治療前の様々な検査をして、手術を行うまでには飼主さんの治療に対する経済的負担も少なくない場合もあるでしょう。中には、手術をしてしこりを取り除いたのだから、その後わざわざまたお金を払ってしこりの検査なぞしなくてもいいのではないか、と思われる方もいらっしゃるかも知れません。手術に続く他の併用療法を行う予定がある場合などはさらに費用がかかることが予想されますから、少しでも無駄な(無駄と思われる?)出費は押さえたいと考えられることでしょう。しかし、ここだけは声を大にしてしつこく繰り返させて下さい。病理組織検査は無駄どころか腫瘍を治療する上で最も有用な情報です。治そうとする癌に対して「知っておかなければならない」情報が詰まっているのです。この情報を元にして先々の治療計画を立て直していかなければならないのです。例えば術前の検査で、手術のみで根治が望めそうだと予想していたとしても、切除した腫瘍を検査したところ、きれいに取りきれてはいるが血管内に癌細胞が侵入していましたよ、という検査結果が返ってきたとしましょう。この場合、「きれいに取りきれている」ので、手術部位には再発しないかも知れません。しかし、既に血管内に癌細胞が侵入して遠くへ運ばれている可能性が報告されているわけですから、遠隔転移に対して何らかの手を打っておかないと、後日転移が起こる可能性が高いわけです。化学療法を併用するなどして残った癌細胞をたたいて転移を防がないと「治すための治療」にはなりません。ここで病理組織検査を行っていないと、手術した→しこりがなくなった、よかった→でも数ヵ月後に遠隔転移して結局死亡した、なんで?などという事態も発生します。なんで?じゃないんです。腫瘍に関する詳しい情報が欠落しているから、当然こういうこともあり得るのです。つまり、きちんと得るべき正確で必要な情報を得ておかないと、折角ペットに手術をはじめとする各種治療を受けさせても全て無駄になってしまう場合があるということなのです。それまでかけたお金が無駄になるだけならまだしも、癌が治るか治らないかはペットの命を左右する問題に繋がるのですから「手術はするけど、病理検査は、しなくてもいいです。お金もかかるし・・・」とは考えないで下さい。ペットの癌を治す上で絶対必要な情報なのですから。

それでは、次に外科療法の特徴を見てみましょう。

 利点
   直接に腫瘍を取り除くため、腫瘍の大きさ(細胞数)を減じる効果が高い。
   通常手術は1回で済む。

 欠点
   手術内容によっては、外見上の変化等を伴う場合がある。例:骨肉腫での断脚術、口腔内腫瘍での下顎切除術など。

また、腫瘍の進行度により手術を行う目的は異なります。大きく分けて、完全に治すことを目的として行われる根治手術と完治はできないがそれぞれの目的に沿うよう行われる非根治手術があります。非根治手術は目的別にさらに分類できます。

 根治手術
  腫瘍が一部分に限局しており(遠隔転移がない)、その腫瘍を残さず取り去っても、そのためにペットに生じる機能障害が許容範囲内であれば
  根治を目的とした手術が実施できます。
 非根治手術
  既に転移が存在していたり、腫瘍の完全摘出が不可能な場合には一部の腫瘍を切除しても完治は望めません。しかし、あえてそれを行う事によ
  りペットに対して何らかの利益を与えることができる場合には手術を行うことがあります。目的別に3つに分類できます。
   緩和的
    疼痛の緩和:腫瘍のある肢に激しい痛みを伴う骨肉腫の場合で、既に肺転移していても疼痛緩和のために行う断脚術など。
    QOL(生活の質)の向上:乳腺や体表部の腫瘍などで、自潰している部分を切除する。自潰部分は化膿や出血等を伴い、ペットに苦痛を与
    え、また気にして舐めたり引っ掻いたりとストレスも溜まります。その他、腫瘍のために腸管に穴があいたり、腹腔内にできた腫瘍がとても
    大きくて他の内臓を圧迫し障害が出る、破裂したら大出血を起こして死亡する危険性があるなど、緊急性がある場合にも手術を行います。
   減容積
    外科療法は、直接腫瘍を取り除く方法のため、癌組織を減らす効果は抜群です。それを利用して他の治療(化学療法、放射線療法)の効果
    が出やすいように組み合わせて行うことがあります。というのも、腫瘍はその容積が減らされると再び増殖するために活性化するのですが、
    化学療法も放射線療法も活性化したがん細胞により効果的に作用する性質を持つからです。また減容積は副腫瘍症候群の軽減に役立っ
    たり、肺に転移した腫瘍の数を減らすことにより延命を図ることもあります。
   予防的
    犬では雌が避妊手術(卵巣摘出術)を受けることはホルモン依存性乳腺腫瘍の予防に役立ちます。また雄でも去勢手術(睾丸摘出術)に
    より肛門周囲腺腫の再発予防に効果があります。
    



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日本獣医がん学会


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