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A-16 短い消化管と嚢虫らしき寄生虫が認められた例
写真1

セネガルカメレオン chamaeleo senegalensis

体重 6g ♀


写真2                                             写真3

A: 肺  B: 肝臓  C: 消化管  D: 腎臓                    内臓側面の拡大。


写真4                                      写真5

E: 左右卵巣                                  消化管を取り除いたところ。卵巣は粒々しています。


写真6

消化管を取り除き肝臓を調べると、表面黄色矢印部位に1mm程度の米粒様の付着物を発見しました。その物体は比較的固く、表面は滑らかで、かなりしっかりと強く肝臓表面に付着しており、引き剥がすのに苦労しました。

写真7

付着していた物体。スケール1目盛りは0.5㎜です。外見は写真下面まで滑らかに丸みを帯びています。吸虫とは形も質も異なるようです。


写真8

さらに顕微鏡にて観察すると、物体の内部構造を見ることが出来ました。丁度中心部に向かって写真右側から伸びている突起物は反転した鈎ではないかと思われます。条虫類の嚢虫ではないでしょうか。ほとんどの条虫は、卵から孵化してもすぐに成虫になるのではなく、さまざまな形態の時期を経て成長して行きますが、その中のひとつの形態が嚢虫です。成長過程のそれぞれには特定の動物種に寄生することが必要で、寄生している寄生虫の発達過程により中間宿主(まだ成虫でない段階が寄生する)、終宿主(成虫が寄生する)などと呼ばれます。爬虫
類は、さまざまな寄生虫の終宿主のみならず中間宿主にもなることが知られています。つまり、カメレオンに寄生し、カメレオンの体内で卵を産む、分裂をする等の繁殖を目的としている寄生虫(カメレオンを終宿主とする寄生虫)だけでなく、カメレオンの体内で成長過程のある時期を過ごし、カメレオンが他の動物に捕食されることによって、今度はその捕食した動物に寄生し、さらに成長して初めて繁殖可能になるという寄生虫も存在するわけです。(この場合カメレオンはその寄生虫にとって中間宿主、カメレオンを捕食する動物が終宿主の役割を果たす。)今回の症例は、その中間宿主になっている可能性が考えられます。




写真9

摘出した消化管を開くと、小型の線虫が寄生していました。また、消化管の粘膜は厚くなっているようでした。

写真10

消化管(胃~直腸)は非常に短く、写真からも分かるように体内をほとんど直線で結んだ程度の長さしかありませんでした。昆虫食のカメレオンは草食性の爬虫類等と比べて短い消化管を持っているのですがそれにしてもこの症例は極端に短いと感じました。

写真11

他のセネガル個体との消化管(胃~直腸)の長さの比較です。上側個体が対照、下側が本症例個体です。体長はほとんど同じか、本症例の方が少し長い位ですが、明らかに消化管は短くなっています。

種類不明の寄生虫が付着していた肝臓と、肉眼的にとても短かかった腸管を病理組織検査に提出しました。肝臓は死後変化が強く肝細胞の観察が困難だったようで、明らかな病変は確認されませんでした。胃腸管にはカタール性変化が認められました。これは死後には起こらない変化であり、何らかの消化管症状により発現することから生前この個体は消化器症状を示していたと考えられます。解剖時には腸粘膜が厚くなっているように感じましたが、病理検査では粘膜や腸管の筋肉の肥厚(厚くなること)は確認されませんでした。腸管自体の長さについては、何か腸に疾患があるからと言って長さ自体が短くなる、という変化は起きないということで、多分生まれたときからの形態的な差異ではないかとの病理医のコメントでした。


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