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D-10 開腹手術にて尿酸結石を摘出した例

写真1

ホシガメ   Geochelone elegans
♂ 体重336g

毎日排便・排尿していたのが、ここ1月ばかり回数が減り、3~5日に1回の排便時には水場に漬かりきりになり苦しそうに長時間いきみが見られ、ペニスも先端が少し露出したまま戻らない状態で、食欲も通常の7割程度に落ちていた個体です。
レントゲン写真により下腹部に結石らしきものが認められました。(黄色矢印で示す周囲より白く写っている円形物質)



写真2

同個体の側面からのレントゲン写真。向かって左が尾側、右が頭側。黄色矢印:結石 緑矢印:結石によって背中側に押し上げられた腸管
写真3

同程度の大きさの他のホシガメのレントゲン(対照写真)。背中側に黒く抜けているのは肺ですが、比較すると2番の写真の方が明らかに内臓に押されて肺の体積が少なくなっているのが分かります。


写真4

総排泄腔からの結石の摘出が不可能だったため、開腹して取り出すことになりました。注射とガスにより麻酔されています。手足には心電図モニターが取り付けられました。腹甲は手術のために消毒されています。
写真5

レントゲン写真から、どの部分の腹甲を切開するかを決定し、手術用のマジックにて切開線を書いたところです。カメの場合切開は失敗できませんから慎重に決定します。



写真6

患者を滅菌ドレープで覆い、患部のみ露出させてから手術を始めます。特殊なドリルを使用して切開予定線に沿って慎重に進めます。ドリルの摩擦により熱が発生し組織を傷つけるのを防ぐ為に生理食塩水を垂らして冷却しながら行います。
写真7

予定通りに切開が終了しました。しかしすぐには腹甲は外れません。腹甲は腹筋とくっついていますので、それを剥がさないと腹甲が除去できないのです。

写真8

腹筋の下には大きな血管や内臓がありますから、それらを傷つけないように丁寧に腹筋と腹甲を分離していきます。最も緊張する手技です。




写真9

腹甲を外し、大きな血管をよけて腹筋、腹膜を切開すると膀胱が現れました。膀胱を切開する前に、大量に貯留している尿を注射器で吸い取り、除去します。そうしないと膀胱を開いたとたんに尿が溢れ出し、腹腔内が汚染されてしまうからです。ピンセットでつまんでいるのが膀胱の端。

写真10

混濁した尿がかなり相当貯留していました。20ml以上吸引できました。膀胱から総排泄腔へ尿が出る出口付近に結石がはまり込んでいたため、尿の排泄が妨げられていたようです。


写真11

膀胱内には大量の尿(注射シリンジ内)と、綿状の尿酸(膿盆向かって右)、固く結石化した尿酸(青矢印:破砕してあるが元は塊状)が貯留していました。


写真12

膀胱内に結石の残りが無いことを確認して、縫合しました。数ヶ月後には溶けて吸収されるタイプの縫合糸を使用しています。
ドレープも新しい滅菌済みのものに掛け替えています。
写真13

膀胱は伸縮自在であり、尿が大量に貯留して伸びて薄くなっても尿が漏れないように切開部分は2重に縫合します。これは1層目の縫合が終了し、2層目の縫合を行っているところです。

写真14

腹腔内への尿の漏れが無いことを確認してから腹膜を閉鎖します。爬虫類の組織はとても脆いため、やさしく丁寧に扱わないとすぐに裂けたり破れたりしてしまいます。腹膜も吸収糸の非常に細いタイプのものを使用して縫合しています。
写真15

腹膜の縫合が終了したところ。非常にきれいに縫合ができました。どこを縫ったのか写真で見ると良く分かりませんね。




写真16

最初に除去した腹甲を元の場所にはめ込みます。切り口の隙間には次に使用する接着剤が入り込まないように抗生物質軟膏を埋め込んで隙間を無くしています。

写真17

特殊な布と接着剤を使用して、はめ込んだ腹甲を周囲の腹甲とともにカバーします。


写真18

よく乾けば、この布当ては剥がれることなく、また水が中に染みこむこともありません。切開した腹甲が周囲の腹甲と完全に癒着するまでには長い時間が必要ですので、それまでは布を除去しないでおきます。

写真19

術後は必要な温度管理下で輸液、抗生物質の投与などを行いました。手術後5日目にはケージ内をよく動き回るようになり、6日目に採食を開始し(クローバー、タンポポ)、7日目には写真のような大きな便を排泄しました。輸液のせいか便はやや緩めです。その後は順調に回復し、排便排尿も毎日あり、尿酸は正常なクリーム状のものを排泄するようになりました。


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