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E-5 皮下より条虫の幼虫が現れた例

写真1

イエアメガエル Litoria caerulea

体重26g

右後足外側よりひも状の物体が出てきています。



写真2

患部の拡大。皮膚が一部破れ、皮下よりひも状の物体が出ています。この物体は柔らかく、千切れやすいものでしたが、ゆっくりとピンセットにより引っ張ると5cm程度の長さが摘出できました。



写真3
ひも状物体の一部を切断し、低倍率の顕微鏡で観察すると、辺縁部分が収縮・伸張する動きが認められ、何らかの生物のようでした。
写真4
中程度の拡大。顆粒状の物質を体内に大量に含んでいました。

写真5
強拡大。顆粒状物質の間に、非常に分かりにくいですが管様の構造が認められ(青矢印で囲んだ部分)その内部は液体が流れているような微細な動きを示していました。
この例のように皮膚の下や筋肉に寄生する寄生虫で、写真のような外観を呈するものとしては条虫類の幼虫が挙げられます。条虫の中には卵が摂取されるとその消化管の中で直接成虫になり、卵を産む事が可能になる種類もありますが、ほとんどの種類の条虫は卵から孵化しても同じ宿主(寄生虫が寄生している動物個体のこと)内では成虫になれず、幼虫時代のみをその宿主で過ごし、宿主が別の宿主(多くは別の種類の動物)に食べられることにより今度はその新しい宿主の中で成長することが初めて可能になります。この時、それぞれの種類の寄生虫は、ある特定の種類の動物(宿主)に摂取してもらわないと成長・繁殖ができません。自分にとって必要な宿主の動物種はかなり限定されており、それ以外の動物種に食べられてもその後の正常な成長を行うことが不可能になるのです。寄生虫がその幼虫時代の生活で必要とする宿主を「中間宿主」と言い、その体内で成虫になり、産卵等の繁殖行動を行うことのできる宿主を「終宿主」と呼びます。
多分今回の場合では、この条虫はカエルの体内では幼虫時代のみを過ごし(カエルはこの時‘中間宿主’の立場)カエルが他の動物種(例えば肉食哺乳類:イタチやネコなど)に捕食された時に初めてその動物の消化管内で成虫となり、産卵行動等を行うのではないかと推測されます。つまり、イエアメガエルの体内では、この寄生虫は消化管には寄生せず、成虫にもならず、幼虫のまま留まってカエルが自分にとっての終宿主に捕食されることを待っているのです。それゆえ、このイエアメガエルの便検査を行っても、条虫卵は検出されないでしょう。両生類を始め、爬虫類なども多くの種類の寄生虫の中間宿主となっており、便検査等で虫卵が検出されなくとも「寄生虫に侵されている」という場合が存在すると言えます。便検査で虫卵が見つかる時は、その寄生虫が両生類や爬虫類を「終宿主」としておりそれらの個体の中で成虫になることができるからなのです。


写真6
便検査により認められた線虫。顕微鏡下で活発に動いていました。
写真7
別の日の検査で認められた線虫卵。写真6の運動線虫の卵かどうかは不明です。

以上の事から、このイエアメガエルは条虫の中間宿主として皮下に条虫の幼虫が寄生しており、さらに線虫の終宿主として消化管内に線虫の寄生も受けていることが分かりました。今回の個体がCBなのかWCなのかは不明だったのですが、一般的にWCの両生類・爬虫類はさまざまな寄生虫を持っていると言えるでしょう。


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